VPD、子供の予防接種、新生児の病気

トキソプラズマ抗体価について

※このコンテンツは、私の日常診療でのメモとして
掲載しているものです。

 

 

トキソプラズマ抗体価について

 

1. IgM抗体価測定
1) 検査の意義と適応
 トキソプラズマの母子感染が生じるのは、多くは妊娠中の初感染
の時である。したがって、感染から間もない初感染が疑われる妊婦が
IgM抗体検査の対象となる。しかし、トキソプラズマ感染においては
不顕性感染がほとんどであり、IgM抗体のスクリーニング検査を行わない
限り、実際に初感染を疑うのは容易ではない。
そこでトキソプラズマ感染のハイリスク因子の有無が重要となる。
特に、加熱処理が不十分な肉(生ハム、馬肉、豚肉、羊肉、鹿肉、熊肉、
牛肉、レバーなど)の摂取、土との接触、水洗いが不十分な野菜の摂取、
海外旅行、生水の摂取、頸部リンパ節腫脹、不明熱がハイリスク因子にあげられる。
2) 検査方法の原理と基準値
 各臨床検査機関ごとに測定法や検査手技が異なる。
商用検査機関の多くで、酵素免疫測定法(ELISA)や間接蛍光抗体法(IFA)がIgM抗体検出法として採用されている。なお、抗体陽性と陰性を区別する
基準値は、臨床検査施設が採用している検査法ごとに設定されている。

 

3) 解釈での注意点
 IgM陽性が必ずしも急性期の感染を示すわけではない。
すなわち慢性感染状態でも弱陽性、判定保留となることがある。
この理由の一つに、標準陽性血清として、低力価抗体を含む血清が
検査キットに用いられていることが指摘されている。
また、persistent IgM症例もしばしば認められる。
これは、長期間にわたりIgM抗体が出現する状態である。

 

2. IgG抗体avidity(avidity index)

 

1) 検査の意義と適応
 一般に宿主は感染の初期に抗原結合力(avidity)が低いIgG抗体を
産生する。その後、時間の経過とともに結合力が高いIgG抗体を
産生するようになる。これを応用して、妊婦のトキソプラズマIgG抗体のavidityを測定することで、感染時期を推定することができる。
すなわち、妊娠中の感染か否かを判断するための補助診断として
利用される。

 

2) 検査法の原理
 抗原と抗体の結合には、共有結合、イオン結合、水素結合、
ファンデル・ワールス力などの、様々な科学結合力が働いている。
抗原と抗体の結合において、弱い蛋白変性剤を作用させると、
抗原抗体間に働いている水素結合を切ることができる。
ELISAにおいて、抗原と抗体の反応後に蛋白変性剤を含む液で洗浄すると、
水素結合が働かなくなり、抗原との結合力が弱かった抗体は抗原から解離してしまう。すなわち、蛋白変性剤を含む液で洗浄した後も残っている抗体は抗原結合力が強い抗体とみなすことができる。
実施には、蛋白変性剤を含む液による洗浄操作を施した抗原結合力が高い
トキソプラズマIgG抗体の吸光度を、蛋白変性剤を含まない洗浄液での
洗いを施して測定されれるトキソプラズマIgG抗体全体量の吸高度で
除した値をavidity index(AI)として表している。

 

3. ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)
1) 検査の意義と適応
 胎内感染の診断のための検査である。抗体の陽転化を短期間に認めた
場合、4倍以上のトキソプラズマ抗体価の上昇を短期間に認めた場合、
トキソプラズマIgM抗体が陽性でかつ、トキソプラズマIgG抗体が陽性で
かつ、トキソプラズマIgG抗体のavidityが低値の場合のように、
胎内感染の可能性が高い場合が適応となる。
陽性の場合には、トキソプラズマの核酸が存在していたことを意味する。

 

2) 検査法の原理
 トキソプラズマのDNAの断片を増幅する方法である。目的とする領域のDNAを増幅するために、まず加熱により変性させ一本鎖DNAにする。
次に2種のプライマーを混合させ、適当な温度条件でアニールさせると
おのおのプライマーは変性したDNAと相補性のある塩基で対を形成し、
DNAポリメラーゼの反応により鎖が伸長し、2種のプライマーに挟まれた
塩基対のDNA断片が複製される。このプロセスを数十回繰り返していくと、
膨大な量のDNA断片を得ることができる。
3) 検体採取方法
 十分な腹壁の消毒の後に、経腹的に23ゲージの穿刺針を子宮内に穿刺して羊水を採取する。
4) 保険適用
 保険適用はない。限られた施設において実験室ベースで行われている検査である。

 

 

 

仁志田先生の「新生児学入門」には、トキソプラズマ症について、日本人妊婦の85%以上がすでにトキソプラズマ抗体を有している、と記載されている。

 

 

記事作成日:2011年2月15日

 

 

トキソプラズマ抗体価について関連エントリー

B型肝炎ウイルスキャリアの母から出生した児
VPDとはVaccine Preventable Diseasesの略で、「ワクチンで予防できる病気」の意味です。日本はワクチン後進国です。このサイトでは、VPDと子供の予防接種、新生児の病気について書いています。
21trisomyと染色体検査
VPDとはVaccine Preventable Diseasesの略で、「ワクチンで予防できる病気」の意味です。日本はワクチン後進国です。このサイトでは、VPDと子供の予防接種、新生児の病気について書いています。
新生児一過性血小板減少症
新生児一過性血小板減少症についてのメモです。